10年以上前から離婚や夫婦相談を受けてきた。
初めてお会いしたクライアントさんはまず、
「相手がこうだった、あぁだった」
と喋り倒す。
「で、あなたはどうしたいの?」
と、聞くと、これが意外に
「まだどうしていいか、ハッキリわからないんです」
と、答える人が少なくなかった。
そのときに、私は必ずクライアントさんに次のように話していた。
「もう十分、相手があぁした、こうしたは見て来たでしょう?
だったらもう相手を見なくていいから、自分の足下をよく見て、自分がどちらの道に進めばいいのかを考えてみて。
目の前の相手ばかりを見ていると、自分の足下がどんな状態になっているかわからないよ?
もしかしてあなたの足下は、田んぼのようにズブズブになって、動けない状態になってしまっているのかもしれない。
まずはその足下をしっかり踏み固めないと道はできない。
道がないっていうことは、どこにも進めないってことなんだよ。
道ができて初めて、どちらに進んでいけばいいか見えるようになるのだから」
自分の足下を確認するってとても大切。
目の前の相手ばかり見て、相手の悪いところばかりを探して、自分がどうしたいのか、どこの道に進みたいのか、
いや、そもそも進める状態なのか……
自分の足下を見るのを忘れてしまっている人が本当に多い。
離婚や夫婦問題を解決するには、この『自分の足下の確認』がとっても大切な役割を果たす。
そして最近、私はこの言葉を若い人たちに何回も話す機会があった。
新しい世界を知って、新しい人達を知って、なんだかすごくキラキラしていた世界を見て、あそこに新しいドアがあるような気がして、自分もそのドアの向こうに行きたいと思って……。
気ばかり焦って、今の自分にそぐわない頑張り方をして……。
それでも、いつかあの扉の向こうに行けるんじゃないかと無理を続けて……
でもね。
そんな無理はいつまでも続かないの。
だって、もともとが『無理なこと』なんだもん。
そのキラキラな世界にいるように見える人たちも、そこに行くまではひとつひとつ努力していたはず。
そんなに一朝一夕にそこに行き着いたんじゃないと思うよ。
私はカウンセラーを10年以上やって来て色んな人を見てきた。
昔は無料相談ですごい勢いで相談を受けていたから、そんなのも入れたら3000件くらいの案件を聞いているかな。
加えて、53年も生きているから、色んな経験もしてきた。
だから、危ないなーと思った人にはちょこっとアドバイスしたりするのだけど、それでも、なかなか私なんかの言葉は届かなかったりする。
キラキラな輝きの方が眩しすぎて、なかなか耳をこちらに傾けてくれない。
それが悔しくてたまらないこともある。
一足飛びに行けるならいいけれど、そんなのは一握りの人。
そこに行くまでに、やらなきゃいけないことはまだまだあるはず。
それをやらずに行けるわけはないんだよ。
ひとつひとつ努力している間には、痛い思いをすることもきっとあるでしょう。
私も高い授業料はたくさん払わされたことがあるよ。
みんなそんな経験のひとつやふたつして、少しずつ大人になって行く。
痛い思いをしたときは、自分の足下をもう一度見てみて。
ズブズブになってない?
ちゃんと道は見えている?
見えてなかったら、まずは踏み固めて道を作る努力からしようよ。
そのうちきっと道の先が見えて来るようになるから。